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抗がん剤曝露対策



抗がん剤の曝露対策について

抗がん剤には発がん性、催奇形性、生殖毒性、遺伝毒性、低用量の臓器毒性といった性質をもつ危険医薬品が数多く存在します。従って、抗がん剤を取り扱う医療従事者を抗がん剤による職業性曝露から守ることは重要な課題となっています。

当院での抗がん剤曝露対策

新しい機器の導入

抗がん剤調製室

当院では、2012年5月に喜谷記念がん治療センターが新設された際に、抗がん剤調製室が設置されました。その部屋に、抗がん剤曝露対策として、抗がん剤自動調製ロボット(サイトケア)とアイソレーター(ケモシールド)3 台が導入されました。

サイトケア

①サイトケア
サイトケアはロボットアームにより自動で抗がん剤調製(抗がん薬の溶液を輸液バッグに入れること)を行うことができる機器で、薬剤師の曝露リスクを大幅に低減できます。
また、調製する空間が無菌のため清潔に調製を行えたり、輸液バッグに入れた薬剤の量をデータ管理できるため、後で確認することも可能です。さらには、機械が調製している間は、薬剤師は別の業務が可能になりますので、業務の効率化にもつながります。
調製に使用する薬剤は、サイトケアの場合、残液を次の同じ薬剤の調製時に使用することができますので、患者さんの負担も軽減や、医薬品の購入額の削減にもつながっています。

サイトケア ロボットアーム

サイトケアを使用して調製

抗がん剤調製件数年次推移

抗がん剤の調製件数を年度ごとに調査しました。下記のグラフに示しますように、年々増加傾向にあります。
また、ケモシールドを使用して調製する「手調製」の件数と、サイトケアを使用して調製する「自動調製」のそれぞれの件数を確認しますと、「自動調製」の件数が徐々に増加していることがわかります。最近では、全体に占める「自動調製」の割合が20%を超える数値を示しています。
このように、今ではサイトケアは抗がん剤調製を行う上で、なくてはならない仲間のような存在になっています。

ケモシールド

②ケモシールド
ケモシールドは作業空間が調製者と完全に隔離されており、従来の設備(安全キャビネット)と比較して調製者への抗がん剤曝露を軽減できます。
調製の手技は、安全キャビネットと変わりません。
抗がん剤調製者は、安心感を持って調製を行うことができています。

ケモシールドと安全キャビネット

ケモシールドを使用して調製

Chemo O3

③ Chemo O3(ケモスリー)
オゾン水を発生する装置のChemo O3(ケモスリー)を使用しています。
これは、オゾン水が抗がん剤を分解することから、この装置により生成されたオゾン水を使って、ケモシールドやサイトケアの使用後の清掃を
行っています。
もしも、抗がん剤が設備に付着しても、オゾン水でその日のうちに除去することで、曝露を蓄積しないようにしています。
最後に消毒用エタノールを用いて、きれいにしてから業務を終了しています。

運用面の抗がん剤曝露対策

最近では、抗がん剤調製者や、抗がん剤調製を行う部屋だけではなく、調製した抗がん剤の輸液バッグに、抗がん剤が付着していないかどうか、という視点での対策にも注目されています。輸液バッグに抗がん剤が付着していたら、どうなるでしょうか。その輸液バッグを触った手にも付着しますし、その輸液バッグを置いた場所にも抗がん剤が付きます。つまり、抗がん剤の曝露が拡大していくことになります。従って、バッグ表面に抗がん剤が付いていない、ということが曝露対策としては、重要なことになります。そこで、当院は、「ポリ袋」を利用した曝露対策を始めました。
そして、ポリ袋に入れることの効果について確認しました。

調製した薬剤をポリ袋に入れる

薬剤をポリ袋に入れて払い出す

新しい調製環境による業務の効率化

以上のように、調製環境が整ったことで、抗がん剤調製を行う際の装備の工夫を行いました。安全キャビネットで調製する際は、ガウンやキャップ、ゴーグルなどを着用して抗がん剤調製を行っていました(下の写真左)。
次の項で述べますが、抗がん剤調製室にほとんど曝露がないことが確認できましたので、普段着用している白衣で調製することに変更しました(下の写真右)。

安全キャビネットで調製した頃の装備

現在の装備

ケモシールドとサイトケア導入前後における
薬剤師の調製待機時間の調査
(詳しくは、田代雄祐、他:医療薬学, 42, 209-214, 2016
をご参照ください。)

ケモシールドとサイトケアの導入、また、薬剤師の装備の変化により業務にどのような効果があったのかを調査しました。
抗がん剤調製を行う際、外来の次の患者さんを待つ、「調製待機時間」が発生します。そこで、抗がん剤調製業務にあたった薬剤師の、1日の拘束時間と待機時間をストップウォッチにより測定した結果、大幅に待機時間を減少することができたことがわかりました。
以前の装備では、ガウンや手袋に抗がん剤が付着している可能性があることや、着脱に時間がかかることなどから、別の業務を行うことが難しい面がありましたが、現在の設備や装備では、待ち時間が発生した際には、すぐに、別の業務を行うことが可能になりました。
患者のベッドサイドや病棟へ行くことも容易となり、よりフレキシブルに薬剤師業務を行うことができるようになりました。

抗がん剤曝露調査

環境調査

①抗がん剤調製室の曝露調査
抗がん剤の拭き取り調査を行いました。これにより、作業する環境にどのぐらい汚染があるのかを確認できます。

安全キャビネットの調査箇所

ケモシールドの調査箇所

上記の写真の赤枠で囲った箇所の調査を行いました。安全キャビネットはどちらの箇所からも検出しましたが、ケモシールドにおいては、ほとんど検出しませんでした。従って、ケモシールドの利用により、安全性が高まったことがわかりました。
②患者さんに抗がん剤の投与を行う外来化学療法室における曝露調査
抗がん剤の曝露対策は、抗がん剤調製室だけが対象ではありません。
抗がん剤の投与を行う外来化学療法室においても、曝露調査を行いました。

フルオロウラシルとシクロホスァミドの2種類の抗がん剤を対象に、環境の曝露調査を行いました。
これは、シートを調査箇所に貼って、5日後にはがして、その間にシートの表面についた抗がん剤の量を測定する方法を用いました。
調査箇所は、看護師さんが輸液の準備を行う準備スペース、輸液ポンプの表面、ベッドサイドの台車の上としました(下の写真の赤枠箇所)。

外来化学療法室

準備スペース

輸液ポンプ表面

台車の上

結果は、準備スペースと輸液ポンプ表面から、フルオロウラシルがわずかに検出されましたが、台車の上からはいずれも検出なし、シクロホスファミドは検出されませんでした。
③輸液バッグ表面の抗がん剤の曝露
新しい曝露対策の試みとして、輸液バッグをポリ袋に入れる運用を開始したことを述べました。
調製後の輸液バッグ表面と、ポリ袋に入れた後のポリ袋の表面の拭き取り調査を行いました。その結果は、輸液バッグ表面からは抗がん剤が検出されましたが、ポリ袋表面からは検出なしでした。
この結果より、ポリ袋の運用は大変有効であったことがわかりました。ポリ袋は安価で、運用も簡便です。とても有用な運用を開始することができました。

職員への曝露調査

①抗がん剤調製者の曝露調査
抗がん剤調製に従事した薬剤師の尿をサンプルに、抗がん剤の曝露調査を行いました。対象は、シクロホスファミド、イホスファミド、ゲムシタビンの3剤としました。
結果は、安全キャビネットで調製していたときは、イホスファミドが検出されましたが、ケモシールドを使用開始してからは、いずれも検出されませんでした。この結果からも、現在の環境は安全性が高いことが検証できました。
②看護師さんの曝露調査
外来化学療法室に勤務する看護師さんの尿を用いて検査しました。対象は、シクロホスファミドです。この調査結果においても、抗がん剤は検出されませんでした。

他施設との共同研究

愛知県下のがん診療連携拠点病院において「PDCAサイクル推進検討部会」の活動をしています。現在、26施設が参加していますが、それらの施設の薬剤師が連携し、抗がん剤曝露について共同で研究を行っています。
全施設を対象としたアンケート調査とともに、一部の施設で環境の曝露調査を行いました。抗がん剤を投与している部屋の曝露の状況を調査しました。

結果の解析はこれからです。各施設の曝露対策と、環境調査の結果を踏まえ、効果的な曝露対策が何であるかを検証予定です。

PDCAサイクル 薬剤師分科会

PDCAサイクルに参加している26施設の場所

まとめ

抗がん剤曝露対策は、薬剤師だけで行えるわけではありません。また、現在の対策がベストとも限りません。点滴を行う際の、曝露対策のデバイスを試用するなど、今でも新たな試みを行っています。
今後も職種を超えて協力しながら、できる限り医療従事者に曝露がない環境の整備を進め、安心して業務を行うことができる体制を作っていきたいと考えています。